人生の流れが変わるとき― 偶然がつないでくれた道 ―

「わたしの足あと」

🌿不思議な巡り合わせ

人生には、不思議な巡り合わせがあるものです。

何をやってもうまくいかない。

この先どうなるんだろう。

そんな不安を抱えていたのに、ある出来事をきっかけに
思いがけない方向へ人生が動き始めることがあります。

今日は、私がそんな不思議な流れを感じた、ある日の出来事をお話ししたいと思います。

🌿自分に何ができるのかわからなかった頃

離婚して間もない頃、私はなかなか仕事を見つけることができずにいました。

長い間、専業主婦として家事や子育てをしてきた私には、社会で働いた経験がほとんどありませんでした。

娘の病気のこともあり、月に一度は病院へ連れて行く必要がありました。

面接でそのことを伝えると、露骨に怪訝な表情をされることもありました。

「また後日、連絡します」

そう言われて、結局不採用。

そんなことが何度も続いていました。

自分には何ができるんだろう。

これからどうやって生活していけばいいんだろう。

不安ばかりが募っていました。

そんなある日、友人から声をかけられました。

「精神科の病院で、ヘルパーの仕事をしてみない?」

彼女も離婚を経験していましたが
ヘルパーとして働きながら学校に通い准看護師の資格を取得していました。

そんな話を聞かせてくれたのです。

でも、私は笑って答えました。

「無理無理!私が看護婦さんなんて!」

娘が病院でお世話になっていたこともあり、看護婦さんは私にとって、とても立派な仕事でした。

病気の人のお世話をする。

そんな仕事が、自分にできるなんて考えたこともありませんでした。

それでも、就職活動は相変わらずうまくいきません。

「ヘルパーさんかぁ……」

「私にもできるんかな?」

そんな思いが、心の片隅に残っていました。

🌿お隣のおじいちゃんが訪ねてきた日

当時、私の家の隣には老夫婦が暮らしていました。

時々、おじいちゃんの姿を見かけたり
訪問看護師さんやヘルパーさんの自転車が家の前に停まっていたり。

でも、近所付き合いはほとんどなく、詳しい事情は知りませんでした。

そんなある日。

友人が家に遊びに来て、二人でおしゃべりをしていたときのことです。

突然、お隣のおじいちゃんが血相を変えてやって来ました。

「ちょっと助けてください!」

何が起きたのかわからないまま、おじいちゃんに促されてお隣の家の中へ入りました。

玄関を入ってすぐの部屋には、介護ベッドがありました。

そして、その横の床に、おばあちゃんが横たわっていたのです。

「落ちてしもたんや!」

おじいちゃんは、おばあちゃんをベッドに戻してほしいと言いました。

おばあちゃんは全身に麻痺があり、身体も大きな方でした。

介護の経験など、まったくない私。

どこをどう持てばいいのかもわかりません。

「できるかな……」

そう思いながらも、とにかく何とかしなければ。

友人とおじいちゃんと私。

三人で必死になって、おばあちゃんをベッドへ戻しました。

🌿おばあちゃんの目が語ってくれたこと

何とかベッドに戻すことができたものの、私は心配でたまりませんでした。

慣れない私たちが抱えたことで、痛い思いをさせてしまったのではないか。

ベッドに横たわるおばあちゃんの目を見つめて、思わず声をかけました。

「ごめんね〜。初めてやから、どうやって持ったらいいかもわからんかったし、どっか痛かったんちゃう?ごめんなさいね」

おばあちゃんは、言葉を発する様子はありませんでした。

でも、その目を見たとき。

私には、はっきりと伝わってきたものがありました。

「ありがとう」

勘違いだったのかもしれません。

本当は何を伝えようとしていたのか、わかりません。

それでも、私にはそう感じられたのです。

その瞬間、胸の奥がじんわりと熱くなりました。

言葉を交わさなくても、こんなふうに気持ちが伝わることがあるんだ。

誰かのお役に立てたことが、こんなにも自分の心を温かくしてくれるんだ。

おじいちゃんも何度も頭を下げて、お礼を言ってくださいました。

でも、私の心に強く残ったのは、おばあちゃんのあの目でした。

今でも忘れられない出来事です。

🌿あの感動が、私の背中を押してくれた

あの日を境に、私の気持ちは変わりました。

看護婦さんにならなくてもいい。

私にも、誰かのお役に立てることがあるのかもしれない。

そう思えたのです。

そして、友人が紹介してくれた精神科病院の面接を受けることにしました。

面接では、娘の病気のことも正直に話しました。

月に一度、通院が必要なこと。

これまでの面接では、それを伝えるたびに肩身の狭い思いをしてきました。

また同じことになるかもしれない。

そんな不安もありました。

ところが、面接をしてくださった看護部長さんは、私の話を聞いてこう言ってくれたのです。

「おかぁちゃん、頑張ったんやね〜」

「大変や〜」

「ここで働いたらいい」

思いがけない言葉でした。

これまで、子どもの病気のことを話すのが
まるで何か悪いことをしているような気持ちになっていました。

でも、その看護部長さんは、私が歩んできた時間を労ってくれたのです。

そして、その場で採用を決めてくださいました。

うれしかった。

本当に、うれしかった。

おばあちゃんからは、人の役に立つ喜びを教えてもらい

看護部長さんからは、温かい言葉をいただいた。

何をやってもうまくいかなかった日々から
まるで上昇気流に乗ったかのように、物事が動き始めたのです。

🌿偶然がつないでくれた道

あの日、おじいちゃんが助けを求めてこなかったら。

たまたま友人が遊びに来ていなかったら。

おばあちゃんの目から、あの温かさを感じ取っていなかったら。

私は、あの病院の面接に行っていたでしょうか。

もちろん、別の道を歩んでいたかもしれません。

でも、あの日の出来事が、私の背中を押してくれたことは確かです。

そして、その一歩が、後に看護師として長く働く人生へとつながっていきました。

🌸最後に

人生って、不思議なものですね。

どれだけ頑張ってもうまくいかないことがあります。

先が見えず、不安でいっぱいになることもあります。

でも、思いがけない出会いや出来事によって、心が動き、次の一歩を踏み出せることもある。

私には、そんな経験が何度かありました。

あの頃の私は、自分に何ができるのかわからず、不安を抱えていました。

けれど、あの日の出来事が、私の知らなかった可能性に気づかせてくれました。

そして、その一歩が、その後の私の人生へとつながっていったのです。

今回、あの日のおばあちゃんの目を思い出したとき
あのときの感動がよみがえり、再び胸が熱くなりました。

長い年月が過ぎても、色あせない思い出があります。

あの日、言葉を交わすことはできなかったけれど、私の心に届いた「ありがとう」。

その温かさは、今も私の中に残っています。

💬 今日のあなたの心に、小さな灯りがとどきますように。

👉生き方を見つめてに戻る

タイトルとURLをコピーしました